2016-01-21

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団 ブルックナー:交響曲 第8番 ハ短調 @東京芸術劇場

今年のコンサート始めは、スクロヴァチェフスキのブルックナー8番となる。
新年のはじめとしては重厚長大路線にすぎる気もするが、まあいいか、ということで。

スクロヴァチェフスキさんについては、ウィーンの音楽の偉い教授様で、演奏家としては、?とかいう偏見があったため、真面目に聞いたことがない(*ハンス・スワロフスキーの勘違いですた。おはずかし)。

だが、当年とって、92歳におなりになるとかで、なんだか有難味がありそうな気がしてしまったのだ。ま、いっぺんくらい、聞いてみてもいいか、というわけである。

何しろ、あの驚愕の神品演奏を聴かせてくれたハウシルトも、長い間、のほほんと聴き逃し、あとで愕然、しかし、後悔先にたたずという、極めて残念な不始末の記憶が鮮明なので、心ををいれかえれば、いいことがおきるかも、なのであります。

ということで、恐る恐る、会場の東京芸術劇場へ。

そういえば、このホール、お風呂場みたいとかいう、ご評価をいただいているようで、ま、聖フローリアン教会の出来そこないと考えれば、案外、ブルックナーむきかもしれません。

会場に向かうお客さん、スクちゃん、ほんとに来てくれて、よかったなぁ、みたいな、お話をされておりました。

で、開演時間を少し過ぎ、御年92歳のスクロヴァチェフスキが、おぼつかなげなあしどりで、ようよう、登場。会場に高まる期待の気配がただよいます。

すると、スクロヴァチェフスキの棒から、なんだか、読売日本交響楽団では、あまり聴いたことのないような木質感のある音が流れてきました。

ブルックナーの響きも、ブラスがきわだつというより、弦と管がブレンドされた、優しみのある響きです。

そして、その音楽も、ごつごつした厳粛なものではなく、もっと、ずっと、インティメートなものにきこえてくるのでした。

例の、世界が鳴動する瞬間も、激しさより、優しい自然現象のように響きます。なるほど、92歳の立ち位置から、みると、ブルックナーの第8番が、こういう風にみえるのか、と感慨深いものがありました。

スクロバチェフスキー老、指揮の間は、気迫十分、矍鑠たるもんであります。

というわけで、激しい、感動を呼び起こす、というより、会場をあとにしてからも、しみじみと、ブルックナーの響きが、からだのなかでたゆたっているような、不思議な、感覚につつまれたのでした。

まあ、なかなかな、体験だったというべきでしょう。

ただ、読売日本交響楽団って、上手じゃないよなぁ、別に、演奏のクオリティに影響がある、ということではなかったけれど。そういう、タイプの演奏じゃないものね。でも、一所懸命だったのは確かなので、まあいいか。

ということで、今年のコンサート始めとしては、上々のすべりだしとなりました。






スクロヴァチェフスキ指揮 特別演奏会 《究極のブルックナー》 1日目
2016年1月21日(木) 19:00開演
会場:東京芸術劇場

指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
ブルックナー:交響曲 第8番 ハ短調





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