このごろ、DSDリアルタイム変換再生やスピーカーの調整のため、レスピーギのローマ三部作のCDを、7.8種類とっかえ、ひっかえ再生していたんだが、そのなかで、アンドレア・バッティストーニという、きいたことのないイタリアの若手のものがあって、その鮮烈さにびっくり、こけていた。
で、バッティストーニなんでも、トゥーランドットの演奏会上演ていうのもあったらしい。知らんかったぞ、だれか、おしえてほしいもんだよ、と思ったが、後の祭り。
その後、イル・トロヴァトーレをやるという情報を入手する。でも、あの、イル・トロヴァトーレですよ。ジジイがああいうもの、うっかり、きいちゃうと、酷いことになりそうなので、だいぶん逡巡しておったのですが、日本で、イタオペをがっつりやるなんて、聞き逃すのはもったいなさすぎ、ということで、意を決っしたのでありました。切符入手。
東京二期会公演、というのが、とっても、とっても、心配ではあったのですが、バッティストーニの磁力には、抵抗できませんでした。
で、近頃はあまり来ない、東京文化会館に。
開演前に、公演《プレミエ・キャンペーン》、演出家ロレンツォ・マリアーニによるプレトークがあるというので、17:45前には、会場に駆け込みました。
マリアーニさん、いろいろおっしゃてましたが、イル・トロヴァトーレは、普通の世界の話ではない、ミステリエ?だ、といっていたのが、印象にのこりました。
で、イル・トロヴァトーレの本番。
台本は、まさに、ミステリイ、不可知な異世界の物語、大爆走ですが、ヴェルディの音楽もそれにぴたりとあわせて、激情の奔流となり流れくだります。
なんだか、ヒロポンかなにかを打って敵艦に突っ込んでゆく、特攻隊みたい(不謹慎な発言で、すみません)、聴いていると、からだじゅうに脂汗、背中が、ぞくぞくしてきました。(不覚にも、休憩前の一場は、本当に体調不良で、場外に退避、初めての体験です。)
休憩中、赤ワイン1杯呑んで、体調をととのえ、後半は、無事、みることができました。
それにしても、ヴェルディって、すげぇ。イル・トロヴァトーレみたいに、天才が裸形になっているような作品をきくと、言葉を失います。
ロレンツォ・マリアーニさんの、演出も、美的な満足感を味あわせてくれる、なかなかに、素敵なもので、全幕に姿をあらわす、ルーナ(月)の背景が、ミステリアスな異世界を支配している魔力を、まざまざと、感じさせてくれます。日本で上演されたオペラの最上レベルといっていいいんじゃないでしょうか。ブラーヴォ。ブラーヴォ。
バッティストーニさんの指揮も、今時の若手によくある知的な洗練というタイプではなく、直截的。もう少しで、牛刀割鶏といいたいくらいだが、なんというか、情感のぬくもりがあって、生身の人間の歌う心から、音楽が出てきているんだと、実感させてくれます。なにしろ、音楽が裸形のヴェルディなんで、文句をつける人がいようとは思われないのであります。ブラーヴォ。ブラーヴォ。ブラーヴォ。
歌い手さんたちは、みなさん、そこそこ、邪魔にはならないんで、充分、がんばっていた、ということでよろしいんでは。なにしろ、ヴェルディ、それも、イル・トロヴァトーレなんで、高望みはせんほうがいいというわけです。
というこで、得がたい、美味しい体験をさせていただきました。
二期会オペラって、なかなかに、あなどれない、しろものといえるのでは、と思った、有意義な一夜となったのであります。
《パルマ王立歌劇場とヴェネツィア・フェニーチェ劇場との提携公演》
東京二期会オペラ劇場
主催: 公益財団法人東京二期会
公益社団法人日本演奏連盟
イル・トロヴァトーレ
オペラ全4部
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
原作: アントニオ・ガルシア・グティエレス
『エル・トロバドール(吟遊詩人)』
台本: サルヴァトーレ・カンマラーノ、
レオーネ・エマヌエーレ・バルダーレ(補作)
作曲: ジュゼッペ・ヴェルディ
会場: 東京文化会館 大ホール
日時:2016年2月17日(水) 17:45より約30分間
会場:東京文化会館大ホール内 ロビー
スタッフ
指揮: アンドレア・バッティストーニ
演出: ロレンツォ・マリアーニ
美術: ウィリアム・オルランディ
照明: クリスチャン・ピノー
演出補: エリザベッタ・マリーニ
合唱指揮: 佐藤 宏
音楽アドヴァイザー: 田口興輔
舞台監督: 佐藤公紀
公演監督: 直野 資
キャスト
配役
2月17日(水)
レオノーラ 並河寿美
マンリーコ エクトール・サンドバル
ルーナ伯爵 上江隼人
アズチェーナ 清水華澄
フェルランド 伊藤 純
イネス 富岡明子
ルイス 今尾 滋
老ジプシー 三戸大久
使者 吉田 連
合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 東京都交響楽団
2月17日(水)公演《プレミエ・キャンペーン》演出家ロレンツォ・マリアーニによるプレトーク
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