山田和樹さんが武満徹のノヴェンバー・ステップスをやるというので、楽しみに、サントリーホールへ。
前半
バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
若かりし頃には、ライナー指揮シカゴ交響楽団の鮮烈な豪腕の演奏を謹聴させていただいたものですが、山田さんで今聞くと、大戦前の不穏な世界が感じられるなつかしい響きが聞こえるものの、全体としては、民族舞踊風の生き生きとかした音楽で、チェレスタやピアノの美しい衝撃音など、まあ、いたって楽しい音楽にきこえます。年を取ったんだということでしょうなぁ。
武満徹:ノヴェンバー・ステップス
演奏前に、山田さん登場。また、話好きの山田さんが小話でも披露するのかと思ったら、なんと、小澤征爾さんが亡くなったとのこと。
ノヴェンバー・ステップスと小沢は切っても切れない曲。ニューヨークの初演の時、練習中楽団員ががいなくなったりすることもあったという、そんな、当時の西洋人の東洋に対する偏見を小澤征爾とともに、苦闘しながら乗り越えてきた曲というお話があり、小澤征爾さんへの哀悼気持ちを込めて、演奏するとのことだった。
私が小澤さんの実演を聴いたのは、若かりし頃、ブザンソンで優勝して凱旋帰国した小澤さんが、N響のお偉いさんたち(その当時の有名ヴァイオリニスト海野義男さま、弟子多数。のちに、弟子にヴァイオリンを紹介するときの多額なコミッションが問題になって、芸大追い出された。かわいそうすねぇ)にイビリ出されて、新日本フィルを振っていた時だった。
その時は井上直幸という当時売り出しのピアニストがいて、その人が弾くモーツァルトのピアな協奏曲が目当てだった。当時は、モーツァルト信者のふりをしていた私の全盛期で、ご同類の友人と2人で今は亡き、新宿の厚生年金会館ホールにいったはず。
で、モーツァルトのあとは、リムスキー・コルサコフのシェヘラザードという演目だったので、モーツァルト教徒の我々が、こんな曲聴くなんて、許されないよねということで、2人して、ホールから逃げ出したという、痛々しい出来事があったのでした。ほんに、おはずかしい。
など、どうでもいいことを思い出しながら、ノヴェンバー・ステップスを謹聴する。
この曲の和楽器、特に尺八などは禅の境地とか、神韻縹渺たる精神性とか、そういう尾鰭がつきがちなわけだが、いま、このノノヴェンバー・ステップスを聞いていると、徹頭徹尾、美的な世界、ほとんど冒涜的なぐらいに唯美的な世界が繰り広げられる感じに聴こえてくる。
これって、唯一神的な信仰告白なんぞと全然無縁な汎神論的な世界観そのものな感じ、やっぱり、これが「和」ちゅうもんなんだろうと思いました。ほんと、どうしようもなく美しい、美しいとしかいえない音の世界です。武満もまだまだ初期の鋭さが十分あって、これはやはり傑作だなぁと、感心しきりでした。
後半、
ベートーヴェン:交響曲第2番。
ベートーヴェンって、9曲の交響曲全部がききごたえありで、第2番は革命前夜な気分がある曲なんですが、山田さんだと、ちょっと優しすぎかもね。インパクトが少な目な気がしました。
読響定期演奏会 第635回
2024/2/9(金)18:30 開場 19:00 開演
サントリーホール 大ホール (東京都)
指揮=山田和樹
尺八=藤原道山 琵琶=友吉鶴心
バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 BB 114
武満徹:ノヴェンバー・ステップス
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 作品36
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