間宮芳生さん、私の若い頃のバリバリの有名作曲家で、コンポジションとかいう合唱曲なんかがあるのは知っているけれど、特段の印象は持っていない方だ。
それに、間宮芳生さんのオペラがあるなんて全然、知りませんでした。でも木島始さん台本で 「ニホンザル・スキトオリメ」というなんだか訳の分からない題名なので、がぜん、興味がわいたのでした。何でも53年ぶりの再演とか。
オーケストラ・ニッポニカという楽団も正体不明で(どうも、芥川也寸志さんが現代曲を振っていた新交響楽団にかかわりがあるらしい)、ほんと、どういうことになっているのでしょう状態であります。
すみだトリフォニーに行くとすごい立派なプログラムを渡してくれて、ありがたやという感じ。 演奏会形式のスタイルでやるようだ。
でも、オーケストラの編成が凄いことになっていて、バグパイプやリュート、リコーダーにパイプオルガンまであって、これじゃあ、再演なんて、出来なかったのもしょうがないなぁていうところです。
さて、オペラですが、昔よくきいた現代音楽で、今聞くとほんと聞きやすい。それにバグパイプ(篳篥かしらと思った)や古楽器が大活躍、合唱の囃子声?なんかをきいていると、昔話の世界に引き込まれてしまう。どうかすると、モンテヴェルディのオペラみたいでした。
それに、木島 始さんのリブレットが(単純といえば単純で)ほんとに面白い。オペラというより典礼劇みたいでありました。
歌手は、衣装をつけて、顔にサルのメイクなんかをして、譜面台を前に舞台にならぶ。ただ、今どきの演奏会形式のオペラみたいに、演劇的な所作があるわけではない。おそらく舞台がオーケストラで満杯なので、難しかったのかなぁとか思ったりもしました。
でも、もうすこし、いろいろ芝居をしてくれると、オペラっぽくなったのになぁ、所作つきもぜひ見て見たいもんだとなどと望外の感を抱いたり。
しかし、中世的な典礼劇に近いジャンルということなら、これでいいのかしら。
パイプオルガンまである編成なので新国立みたいなところで本格的なオペラ形式でやるのは難しそうだけれど、かえって、演奏会形式のほうがあう作品なのかもしれません。
歌手や語り部のみなさんも、十分な出来映えでした。マイクを使っていたみたいだけれど、なぜかはよくわからりません。なくても十分そうだったけど、録音か録画でもしてるのかしら。そうだとよいのだけれど。
あと、字幕付きの公演、木島さんの台本の役割の大きさを思うと、当然とも思ったが、もしかすると、なくとも十分わかったし、間宮芳生さんの音楽を聴くという意味ではマイナスだったかもしれないと思いました。
これは、痛しかゆしですね。
木島さんのリブレット、原爆後の今を、ふわふわと生きているわたしたちに、自分自身がどこからきて、どこにいくのか、もう少しものを考えた方が良くないんじゃねっ、ていうことなのしら。いろいろ思いを巡らさられるお話で、何が正解なのかは、それぞれの心の中で、それぞれにということなんでしょう。
久しぶりに、とっても良い体験をさせていただきました。池辺晋一郎さんの省エネオペラなんか再演するなら、こういう作品を苦労してでも上演した方が、単純に、よっぽど楽しめるんだけれどなぁ。満足感はすこぶる大きいものがありました。
終演後 オンとし90歳という間宮芳生さんが舞台に上がって、盛大な拍手を受けておりました。
オーケストラ・ニッポニカ第34回演奏会
《間宮芳生90歳記念》
オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」
2019年1月27日(日)16:00開演
すみだトリフォニーホール 大ホール
セミ・ステージ形式/日本語上演/字幕付き
間宮芳生:
女王ざるの間奏曲~オーケストラ・ニッポニカ委嘱作品(2018)
オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」(1965)
台本: 木島 始
指揮: 野平 一郎
演出: 田尾下 哲
副指揮: 四野見 和敏
キャスト:
スキトオリメ (テノール) 大槻 孝志
女王ザル(ソプラノ) 田崎 尚美
オトモザル (バリトン) 原田 圭
ソノトオリメ (バリトン) 山下 浩司
くすの木 (バリトン) 北川 辰彦
男 (俳優) 根本 泰彦
合唱: ヴォーカル・コンソート東京/コール・ジューン
管弦楽: オーケストラ・ニッポニカ
制作:芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ
主催:芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ
後援:墨田区
助成:芸術文化振興基金助成事業/アサヒグループ芸術文化財団/朝日新聞文化財団/五島記念文化財団/全国税理士共栄会文化財団/野村財団
認定:公益社団法人企業メセナ協議会
協賛:株式会社資生堂/セイコーホールディングス株式会社/玉の肌石鹸株式会社/ハウス食品グループ本社株式会社/ミヨシ油脂株式会社
アーカイヴ協力:東京音楽大学付属図書館
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