メジューエワが大好物のラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番をやるというので、サントリーホールへ。指揮は西本智実さんで、彼女をきくのは初めてである。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番は、言わずとしれたデヴィッド・リーンの『逢びき』の映画音楽として、有名になった曲で、その演奏者はアイリーン・ジョイスという女流ピアニストで、なかなかの評価でした。
私の若い頃、ラフマニノフについては、クラシックというより、ハリウッドの音楽、まじめに相手をするもんじゃない、的な扱いでしたし、ピアノ協奏曲第2番の名演も、この曲はやっぱり女流がいいみたいな話になっていたものです。
わたくしなども、自分は、ラフマニノフが大好きだとカミングアウトするにいたるには、かなりの年月を要しました。(年をとって面の皮が厚くなると、好きなもんは好きで、だれに遠慮しなきゃいけねえんだ、と開き直るのが上手になります)
で、ピアノ協奏曲第2番については、リヒテルの濃厚激演が出現、私などは、この曲は、大男の男性(ラフマニノフみたいにね)が弾かなくちゃ、手に負える代物じゃないと、考えるに至りました。
というような、うろんな経過をへて、真性のラフマニノフ・ジャンキーと化した私ですので、かなり好感度が高いメジューエワといえども、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はどうなんだろう、と懸念を抱いておったわけです。
と、いうことで、メジューエワの、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ですが、メジューエワらしい、素直な美しい演奏でしたが、ラフマニノフのむせかえるような情感のうねり、ダイナミックなピアノの力感を堪能させる物ではありませんでした。
メジューエワはやはり、メジューエワだったということになるようです。はじめてきく、バックの西本智実さんは、かなり、エモーショナルな鳴らしかたでしたので、少し、ピアノとずれがあったようにも思います。
メジューエワ、アンコールにラフマニノフのプレリュードをひいて、これは、ぴったりの、美演、すこぶる楽しめました。(作品32-5らしい)
後半、西本智実さんの、ラフマニノフ:交響曲第2番、出だしから、すごく遅いテンポで、エスプレッシーボ、ねばりにねばる節回しで、ラフマニノフ節全開です。で、リズミックなところは、一転、切れの良い推進力のある音になって、面白い聞き物でした。
特に、第三楽章の伊藤 寛隆さんのクラリネットのソロ、西本さんのゆっくりしたテンポに乗り、日本のオーケストラで、ここまで、嫋々とやるかと思うほど、泣きがはいっていて、うれしくなってしまいました。
これで、オーケストラの低弦がさらに、厚く鳴ってくれたら、激演といいてもいい出来じゃないでしょうか。西本智実さん、腰骨と脊椎損傷とかで、杖歩行、椅子に座っての指揮でしたが、そんなダメージは少しも感じさせない指揮ぶりで、大変、楽しめました。
日本フィルハーモニー交響楽団 第372回名曲コンサート
サントリーホール大ホール
2016年9月18日(日) 14:00--16:30
出演: 指揮: 西本智実[ミュージック・パートナー]
ピアノ: イリーナ・メジューエワ
曲目: ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調op.18
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調op.27
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