やはり、カンブルラン・読響とはだいぶ違いました。
大野・都響は、美音系というより、引き締まった響き。そして、大野さんの棒は、物語性豊かな語り口で、細やかな描写力を発揮して、飽きさせない。
大野さんらしく、後期ロマン派のドロドロ感はないけれど、鮮やかにくっきりとした音で 、都響も実力発揮という感じです。
ヴァルデマールのクリスティアン・フォイクトさんとトーヴェのエレーナ・パンクラトヴァさんのペアは十分な歌唱だけれど、際立っっところはなかったかなぁ。
クリスティアン・フォイクトさんは、どちらかというと優しい声なので、もう少しヘルデン的な方が、猛々しい武人王っぽかったんではなどと思いました。
トーヴェの死の場面、退場するエレーナ・パンクラトヴァに変わって、藤村さんの山鳩が登場、歌い手が入れ替わる仕掛けが、オペラっぽくてなかなか面白い。
藤村さんの山鳩、もう、さすがの歌いぶり、ヴラーヴァ!
農夫(バリトン)の甲斐栄次郎さんも威力のある声で、立派。
道化師クラウスのアレクサンドル・クラヴェッツさん、瓶の酒を呑みながら千鳥足で登場 コミカルなテノールで楽しませてくれました。
最後の語り手、フランツ・グルントヘーバーさんも渋くしめて良い感じでありました。
主役のヴァルデマール王とトーヴェの二人が今一歩なのは、歌い手の性ばかりではないのかも。
シェーンベルク《グレの歌》、シェーンベルクがオペラ作曲家じゃないので、声が大編成のオケに埋もれがちで、歌手が気の毒という話があったけれど、その通りのような気がする。
(でも、藤村さんの山鳩は、全然問題なしなので、それだけとばかりはいえないかもなぁ)
あと はシェーンベルクはマーラーにくらべて、メロディの創造力が劣るとかいう話も見た気がするが、それも、なんだか、納得がいくかもしれんなぁ。
後、曲としての大大円、太陽が表れて、突如 グレの世界に救済がもたらされるんだけれど、魑魅魍魎の闇の世界が 突如、脈絡もなく、光の中に雲散霧消とか、余り、腑に落ちないんだが。
ヴァルデマールの嘆きや神への呪詛はどうなっちゃたんだろう。
ま、これは、原作のヤコブセンに文句を言わにゃいかんのかもね。
などなど、無体な不満を述べているわけですが、結局のところ、非常に楽しい演奏会でした。
大野さんのグレは、素人にもわかりやすくて、効果満点というところでしょうか。
秋にあるノットのグレの歌がどうなるのか、とても楽しみであります。
東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.6
シェーンベルク《グレの歌》
日時:2019年4月14日(日)15:00開演(14:00開場)
場所:東京文化会館 大ホール
■出演
指揮:大野和士
ヴァルデマール王(テノール):クリスティアン・フォイクト
トーヴェ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
農夫(バリトン):甲斐栄次郎
山鳩(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
道化師クラウス(テノール):アレクサンドル・クラヴェッツ
語り手(バス・バリトン):フランツ・グルントヘーバー
管弦楽:東京都交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:マティアス・ブラウアー
合唱指揮:宮松重紀
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