2019-07-20

「トゥーランドット」 大野和士 バルセロナ交響楽団 @NNTT

新国立のトゥーランドットに行く。演出のアレックス・オリエさんが大物らしく、斬新な舞台を作るそう。それに、ハッピーエンドにはならないと、インタビューで言っていたので、とても楽しみである。

で、大野さんの棒、とても力のこもったもので、バルセロナ交響楽団もスゲエ大音量。その上、普通では聞こえてこないいろんな楽器やフレーズが耳にとびこんできて面白い。
ためをきかせたドライブなんか、とってもオペラティック。聴きものでした。

演出も、高い建物の内部空間の底に人民がいて(ブレードランナーみたい、電飾はないけど)、上まで続く階段に登場人物が出てきたりする。

トーランドットや皇帝は天上から降りてくる建物に乗って現れ、現世との隔絶した世界に住む天井階の存在になっている。

ピンパンポン、は市場の無頼人みたいないで立ちで現れ、二幕になると、炭鉱の現場監督 風、三幕は地上世界の差配の役人と、なかなかユニーク。意味は、ようわかりません。

舞台装置が、ゼフェレッリの金ピカ趣味(意外と好き)の対極で、トゥーランドットの世界の厳しいヒエラルキーを表すようにダークな色調。

三幕になって、トゥーランドットが地上に降りてくると、薄明るい上空から光が差す。

歌手陣は、カラフ、トゥーランドット、リューとも、素晴らしいパフォーマンス。とくにあれほどブラブラーらのあるカラフは久しぶりで、感服しました。

あと、皇帝が ただの弱々しい老人でなく、天上界にあって、苦悩する人物の生々しさがあって、世界観にぴったり。

このトゥーランドットでは、リューは舞台の真ん中で、主役として、自殺する。そして、ティムールはおこって、カラフの手を振り切り、奥に去っていく。

で、お楽しみだった、ラスト。赤い花びらのようなものが、三幕で開けた頭上からが降ってきて(奥さん、あれはリューの血だと云っとります。なるほど)、そのあと、ある意味予想どおり、トゥーランドットがリューが首を切って死んだナイフで自殺するという幕切れであります。

例の2005年、バルセロナ、リセウ大歌劇場、ヌリア・エスペル演出の方式ですね。

まあ、リューが死んだあと、カラフ、トゥーランドットが能天気に愛を歌い上げるという、通常の演出の、どんなもんだべ感は皆無なので、気分的にはずっと腑に落ちます。

(もしかしたら、カラフを刺してトゥーランドットも死ぬという、心中展開かしらとドキドキしましたが、それはやりすぎということかもね。)

でも、見ていて、とても生き生きと新鮮な舞台で、大層楽しめました。

あの、アンハッピーエンド方式は、「トゥーランドット」の定番化してもいいんじゃないでしょうか。



2018/2019シーズン
オペラ夏の祭典 2019-20 Japan↔Tokyo↔World
オペラ「トゥーランドット」/ジャコモ・プッチーニ ※フランコ・アルファーノ補筆
Turandot / Giacomo PUCCINI
全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス

2019年7月20日(土)
予定上演時間:約2時間50分(休憩含む)

スタッフ
指揮 大野和士
演出 アレックス・オリエ
美術 アルフォンス・フローレス
衣裳 リュック・カステーイス
照明 ウルス・シェーネバウム
演出補 スサナ・ゴメス

キャスト 2019年7月20日
トゥーランドット イレーネ・テオリン
カラフ テオドール・イリンカイ
リュー 中村恵理
ティムール リッカルド・ザネッラート
アルトゥム皇帝 持木 弘
ピン 桝 貴志
パン 与儀 巧
ポン 村上敏明
官吏 豊島雄一

合唱 新国立劇場合唱団 
管弦楽 バルセロナ交響楽団

制作 新国⽴劇場

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