何しろ原作が石川淳である。
われら文学青年崩れの不良ジジイ世代にっとては、ほぼ、神さまと言っていいい作家だけに何だか緊張してしまう。
それに紫苑物語 、なかなか手強い作品なので、どう料理されているのか興味津々であります。
西村朗さんについては、ほぼ、同世代の作曲家だけれど、知っているのは名前だけという感じ。なので、ケチャ、蓮華化生、蘇莫者なんぞのCDを購入して、お勉強。
まあ、わかりやすい現代音楽のようです。
で、このオペラ、芸術家の魂の物語ということになったようでありました。
音楽は、西村さんらしい、聞きやすい音楽で 楽しめるもの。
特に1幕のフィナーレぐらいから 良い感じで盛り上がってきて、ききばえがしました。
2幕の 宗頼と千草の愛の二重唱など、とても美しく、うっとり。
幕切れの音楽も印象的で、なかなか、聴きごたえのあるオペラでありました。
でも、リブレットとしてはどうだろう。ただ、考えてみれば(考えなくても)、石川淳のほとんど詩に近い勁い文章で紡がれた物語を、リブレットにするというのは、難題過ぎて、これでも、健闘した方なのかもしれません。
ただ、それぞれの登場人物が類型的に整理され過ぎていて、ふくらみには欠けている気がしました。
そして、うつろ姫の存在感がすこしだけ薄いかも。原作では醜女ですが、オペラでは美女らしい(衣裳的には違いは判らんかったがなぁ)、醜女のままの方が、都世界の妖怪性によりふさわしいんじゃね、などと思いました。
笈田ヨシさんの演出は、正直、平均レベル。このオペラが、芸術家の魂の物語ということなら、こんなもんなんでしょう。ちと、全体に暗いかと。(魂の物語じゃあ、しょうないか)
ともあれ、面白いオペラになりそうではあるので、これから、育っていってくれればいいなぁと、思ったのでした。
あと、ひとつ言わせてもらえば、藤内の人物設定。ただの、小物の陰謀家になっているのは、違うんじゃぁないの。藤内は、「神々の黄昏」のハーゲンじゃなくちゃ全然面白くない。
でも、創作に深くかかわった笈田ヨシさんの解釈のようなので、ハーゲン版はあと何十年かしないと出てこないんだろうなぁ。
でも、創作に深くかかわった笈田ヨシさんの解釈のようなので、ハーゲン版はあと何十年かしないと出てこないんだろうなぁ。
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