バッティストーニがメフィストーフェレを演奏会形式で振るというので、 サントリーホールに。実演は初めてだ。
ボーイト自身のリブレット(まあ、当然)、いかにもインテリが書いた台本で、イタオペ的トンデモなところは皆無。それなりに、よくかケテルのでは。何しろ原作がゲーテのファウストなんでまとめるのは大変である。
音楽もボーイトが次代のホープと嘱望されていたのに、先輩ヴェルディの弩天才ぶりをまのあたりにして、翼が折れたというだけあって、なかなかの実力。晦渋さはまるでない。
どこか秀才の書いた音楽の気があるけれど、イタオペとして、十分以上に楽しめた。それはバッティストーニの生命力溢れた指揮も大いに効いていたんだろう。
メフィストのマルコ・スポッティもなかなかだったし、代役出演のファウスト、アントネッロ・パロンビもイタリア声で予想以上に楽しめた。
マルゲリータ/エレーナのマリア・テレ-ザ・レーヴァも活きがよく十分。この2役が同一人なのは 現世のマルゲリータと神話のヘレナは同じ人の変容ということなんでしょうね。
日本人のヴァグネル/ネレーオ役の与儀巧さんもなかなか綺麗な声でよかったが、ベテランの清水華澄さんのマルタ/パンターリスはすこしだけへこんでたかなぁ。
で、演奏会形式といってもプロジェクターの画像がでたり、簡単なショウアップがあって オペラ劇場で見る現代風の書割演出と大して違いはなく、音楽にはどっぷり浸かれるので、なかなか美味いやり方だと、あらためて納得してしまう。
ただ、ボーイト/歌劇『メフィストーフェレ』、ゲーテ「ファウスト」第5幕の内容が大幅に省略されているので、オペラの終幕が浄土真宗的「善人なおもて往生をとぐ」の単純な結末にしかみえない。
音楽がモリモリで救いを差し伸べているので そうなんダァと思うほかないんだが、劇の展開的にはいまいち腑に落ちない気がしてしまった。
ボーイトの歌劇『メフィストーフェレ』の筋立てに従うなら、ファウストは、ドン・ジョヴァンニ同様、当然、地獄に行かなきゃいけないんじゃないの。インテリの悩みは深いということかもしれんが、あれだけやりほうだいなんだから、これじゃぁ、能天気すぎるもんね。
とはいえ、十分満足、大変良い演奏会でした。また、演奏会形式 のオペラに行こおっと。
(ということで、ノットのフィガロを買い込む。楽しみだぁ。)
東京フィルハーモニー交響楽団 第912回サントリー定期シリーズ
ボーイト/歌劇『メフィストーフェレ』(演奏会形式)11月16日(金)19:00開演(開場18:30)
会場:サントリーホール(六本木/赤坂)
指揮:アンドレア・バッティストーニ
メフィストーフェレ (バス): マルコ・スポッティ
ファウスト (テノール): ジャンルーカ・テッラノーヴァ→アントネッロ・パロンビ
マルゲリータ/エレーナ (ソプラノ): マリア・テレ-ザ・レーヴァ
マルタ/パンターリス(ソプラノ): 清水華澄
ヴァグネル/ネレーオ (テノール): 与儀巧
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
上演時間のご案内
プロローグ:約30分
1幕:約30分
2幕:約35分
― 休憩:20分 ―
3幕:約25分
4幕:約25分
エピローグ:約15分
合計:約3時間 (休憩含む)
0 件のコメント:
コメントを投稿