総監督:宮田 慶子(新国立劇場演劇芸術監督)
指揮:佐藤 正浩
演出:岩田 達宗
支倉六右衛門常長:小森 輝彦
ルイス・ソテロ:小山 陽二郎
徳川家康:井上 雅人
伊達政宗:金沢 平
影:平野 雅世
合唱:オペラ「遠い帆」合唱団
児童合唱:NHK仙台少年少女合唱隊
三善晃作曲、高橋睦夫台本という、超強力な組合せのオペラである。
どんなことになちゃうのか、なかなか、興味がそそられるわけだが、実をいうと、三善さんは、どちらかというと、苦手である。
非常に緻密な音がして、アカデミックなフランス派の大物的な印象。
フランス派といっても、メシアンや、武満(一応、フランス派でいいよね)みたいに、美味しい音が全然しない。デュティユー系統の晦渋な音楽という先入観があります。
私が、日本の現代音楽に粘着していたのは、随分前なので、三善晃さんが桐朋音大の学長さまになっていたのを知って、ビックリこいたもんでございます。
2013年10月にご逝去ということでありました。合掌。
で、恐る恐る、という感じで、NNTTの中劇場へ。
2時開場を、2時開演と間違えて、大幅に早く到着。
はからずも、高橋さんや演出の岩田さん、総監督の宮本さんによる、プレトークをきくことになってしまった。とはいえ、非常に面白くおはなしをきかせていただく。
高橋さんと三善さんが、創作の過程で大葛藤を演じたことなど、高橋さん自身の口から直接うかがって、ホウホウ、という感じ。(そういえば、どこかで、聞いたことがあるような)
出だしの子ども達の民謡調の数え歌は、台本を渡した後で、作曲者が冒頭に合唱曲を置きたいと希望したのに応えて作ったのだとか。
この部分が、作品を骨格として纏める、大事な要素になったといっていた。そうなんだぁ。
演出の岩田さんは、この作品のスコアをみたとき、これは、もろにパッション(受難曲)そのもの、オラトリオだと思った、とのこと。これを、オペラとして演出するのに、合唱を、説明役でなく、24役??(数は適当、忘れちゃいました)の登場人物として、役作りに挑戦したといっておられましたです。
オラトリオなんて、なんだか、松村禎三のオペラ「沈黙」と同じパターンみたいだなぁ。作曲家が強力で、台本も強力だと、どうしても、そうなちゃうのかしら。ちと、心配。
プレトーク聴いてて、政宗さまがでてくるって、我が家の御ん主筋様のおはなしなんだって、あらためて気づく。畏れ多いことであります。
で、オペラが、始まる。
印象的なこどもたちの数え唄で、作品のすべてが、最初から開示されてしまいます。
暗い、暗い、暗い、どこまでも。
遠い、遠い、遠い、港目指す帆、遠い帆。
という、ライトモチーフで、すべてが、覆い尽くされているような音楽。
いかにも、高橋睦夫さんらしい、観念のドラマが展開していきます。
そして、登場人物すべての受難が果てたその最後に、音楽が、音楽だけが可能な、救済の調べを奏でて、幕が下りました。
これは、すごいなぁ。魂がこもった作品に違いないよなぁ。
池辺さんの鹿鳴館とは、モノが違います。(あっちは、音楽がまあ、超軽量級なので、オペラ、として、の娯楽性がたっぷり、でしたが)
で、オペラとしては、どう、なんでしょう。
家康の切支丹禁止令、イエズス会の事前の讒言という、はじめから敷かれていたレール、その上で遂行された、不可能なミッションという、枠組みがあるわけだけれども、トーンが暗いばかりでは、作品の深みとか、哀切さとかが、弱くなってしまうのではと思いました。
これは、演出だけでなく、曲自体にも原因はありそうです。力の抜けた部分が少しないと、私みたいなへたれには、緊張が続きません。
とくに、スペイン王や、パーパ(教皇)登場の場面では、近づくく事の出来ない、光り輝く場所としての、造詣がもっと強烈にあれば、さらに、よかった、と思います。闇の深さには光が必要ですもの。
支倉六右衛門常長の小森 輝彦さん、ルイス・ソテロの小山 陽二郎さん、声はきちんとしていましたが、正直、役になりきるには、もうすこし、力がいるようです。影の平野 雅世さん、イエズス会の讒言の場面なんか、すごい迫力でありました。ブラーヴァ。合唱は素人なんだそうで、たいしたもんです。仙台フィル、自分の楽団のオペラというものがもてるなんて、なんて、幸運なんでしょう。シアワセですよね。指揮、佐藤 正浩さんにいついては、うんぬんする材料がないような。
調べてみたら、初演は、総監督/観世榮夫、音楽監督・指揮/外山雄三、演出/佐藤信
出演 支倉六右衛門常長/勝部太、ルイス・ソテロ/伊達英二、伊達政宗/高橋啓三、徳川家康/加賀清孝、影/菅英三子という、豪華版だったようです。三善晃さん存命中のプロダクションなので、指揮/外山雄三、演出/佐藤信はうらやましいかも。
劇場からの帰り道、階段を下りていると、お客さんのご夫婦が「人生は徒労だということか」とおっしゃっていましたが、私としては、受難の果てにしか、救済は訪れないというお話だと、考えることにいたしたいと思います。
で、また、見にきたい?ジジイには、かなり、重い試練になりますが、はて。
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