2022-06-03

藝大21 創造の杜2022 「作曲家 ジェルジュ・リゲティ vol.2」 @東京藝術大学奏楽堂

 藝大21 創造の杜2022 「作曲家 ジェルジュ・リゲティ vol.2」を聴きに、上野の東京藝術大学奏楽堂に行く。

 リゲティは若かりし頃、現代音楽をお勉強ということで、ムリヤリに聞いていた頃、好きになった数少ない作曲家の1人である。

いまどき、すべてリゲティだけの演奏会なんて極めて珍しい。さすが東京芸大ということで楽しみである。

最初の曲「 チェンバロのための《コンティヌウム》Continuum für Cembalo (1968)」

無限反復というのか、ミニマル的というのか、微細な変化が無限旋律的につづく曲で、極めて美しい。でも演奏はさぞ難しかろう。

続けて、2曲目の《アトモスフェール》Atmosphères für großes Orchester (1961)、超有名曲で、大好物。いいのう、リゲティって。

3曲目

《チェロ協奏曲》Konzert für Violoncello und Orchester (1966)

なかなかに変化に富んだ、面白い曲。曲の最後には、チェロのソロ奏者が、フレットから指を浮かせて、手をフレットのさらに上に伸ばしていく。音の無い音が遥か上まで立ち昇て、昇天してゆく。へえぇ。

後半、

 100台のメトロノームのための《ポエム・サンフォニック》Poème Symphonique für 100 Metronome (1962)

オーケストラの奏者がメトロノームを持ち寄って、一斉に、思い思いののテンポで鳴らす。  無秩序のメトロノームの音の集合が、ある種の法則を持った響きの変化にを作り出し、川の音とか森の葉のそよぎとか、そんな世界が生まれていく。で、最後、1台だけ残り、そして、終わる。世界が静まる。

続けて

《ロンターノ》Lontano für großes Orchester (1967)

有名曲、やはり聞き映えがする。でも、《アトモスフェール》がやっぱり好きかも。

最後は、

《サンフランシスコ・ポリフォニー》San Francisco Polyphony für Orchester (1973-74)

非常に変化に富んだ、聞き映えのする曲。演奏効果も満点。わたしのリゲティのイメージとはだいぶ違う。まあ。今どきに近づいている印象。へえぇ、でした。



藝大21 創造の杜2022 「作曲家 ジェルジュ・リゲティ vol.2」

東京藝術大学奏楽堂(大学構内)

〒110-8714 東京都台東区上野公園12−8

日時

2022年6月3日(金) 19:00開演(18:15開場)

         ※18:30~ プレトーク:ジョルト・ナジ


主催 東京藝術大学演奏藝術センター

東京藝術大学音楽学部

後援 (特非)日本現代音楽協会

(一社)日本作曲家協議会



藝大21 創造の杜2022

作曲家 ジェルジュ・リゲティvol.2


リゲティを聴く、音楽の未来を問う。


  2022年度の「創造の杜」は、2020年に予定しながらも新型コロナウイルス感染拡大の影響のため中止となった公演内容を、曲目・出演者を変えずにお贈りいたします。

取り上げるテーマ作曲家は2016年に続き2回目の登場となる、ジェルジュ・リゲティ(1923~2006)です。

ハンガリーに生まれ、1956年の動乱を機に西側へ亡命したリゲティは、その後、多様な伝統や異文化にインスピレーションの源を見出し、独自の音世界を築いてきました。

ハンガリー時代からラジオを通じて西側の戦後前衛音楽に通じていたリゲティですが、その作品群は戦後前衛音楽史にすんなりと当てはまるものではありません。

ブーレーズの《構造1a》(1952)分析を通じたトータル・セリー批判(1960)しかり、まっとうな楽曲分析を拒む一連の「ミクロ・ポリフォニー」作品しかり、

オペラ《グラン・マカーブル》(1977/96)を彩る悪趣味な下ネタしかり、リゲティの作品にある「アウトサイダー感」は、

常に彼の音楽に一貫した様式美学を模索する聴取者をどこか突き放すものです。

 今回のプログラムも、リゲティのそうしたユニークさを再認識する構成となっています。

フルクサスとの関わりから生まれた100台のメトロノームのための《ポエム・サンフォニック》(1962)、

偏執的なまでの自動運動を表現したチェンバロのための《コンティヌウム》(1968)、

そしてサンフランシスコ名物である海上を蠢く霧の様子を音楽化した《サンフランシスコ・ポリフォニー》(1973-74)に加え、

いわゆる「ミクロ・ポリフォニー」の代表作《アトモスフェール》(1961)と《ロンターノ》(1967)、

そしてヴィルトゥオーゾ的要素満載の《チェロ協奏曲》(1966)が、リゲティの音世界の広い守備範囲を披露することと思います。

                                                

(音楽学・本学音楽学部楽理科教授)福中 冬子


▊曲目


  チェンバロのための《コンティヌウム》Continuum für Cembalo (1968)


《アトモスフェール》Atmosphères für großes Orchester (1961)


《チェロ協奏曲》Konzert für Violoncello und Orchester (1966)


  100台のメトロノームのための《ポエム・サンフォニック》Poème Symphonique für 100 Metronome (1962)


《ロンターノ》Lontano für großes Orchester (1967)


《サンフランシスコ・ポリフォニー》San Francisco Polyphony für Orchester (1973-74)


▊出演

ジョルト・ナジ <指揮>

ハンガリー生まれ。リスト音楽院で I.パルカイに指揮を学び、最優秀のディプロムを授与される。

その後P.エトヴェシュに学び、国際エトヴェシュ・インスティテュートの客員教授として各地で教鞭をとった。

1999年よりイスラエル・コンテンポラリー・プレイヤーズ主任指揮者兼音楽監督、2002年~14年パリ国立高等音楽院指揮科教授。

これまでにBBC響、ベルリン放送響、アンサンブル・アンテルコンタンポランのほか、新日本フィルや藝大フィルなど多くのオーケストラの指揮を務めている。

800を超える初演、同数におよぶ録音、及びイスラエルでの現代音楽の秀逸な演奏により特別賞を受賞。東京藝術大学音楽学部卓越教授。


大塚 直哉 <チェンバロ>

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院チェンバロ専攻を修了後、アムステルダム音楽院チェンバロ科およびオルガン科を卒業。

アンサンブル・コルティエ、バッハ・コレギウム・ジャパンなどの通奏低音奏者をはじめ、チェンバロ、オルガン、クラヴィコードのソリストとして活発な活動を行うほか、

これらの楽器に初めて触れるひとのためのワークショップを各地で行っている。

「トッカーレ[触れる]」(ALM RECORDS)ほか録音多数。東京藝術大学音楽学部教授、国立音楽大学非常勤講師。

宮崎県立芸術劇場、彩の国さいたま芸術劇場のオルガン事業アドヴァイザー。NHK/FM「古楽の楽しみ」案内役として出演中。

 

山澤 慧 <チェロ>

古典作品の勉強を地道に重ねながら、現代音楽の演奏や作曲家への委嘱を積極的に行い、チェロの可能性を探求し続けている。

2015年以降、20世紀以降に書かれた無伴奏チェロ曲のみを集めたリサイタルシリーズ「マインドツリー」を毎年開催。2020年からは同シリーズの一環として、

J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲をテーマに据えたプログラムを6ヶ年計画で展開している。

2021年には新シリーズ「邦人作曲家による作品集」をスタートさせた。

音川健二、藤沢俊樹、河野文昭、西谷牧人、鈴木秀美、山崎伸子、ミヒャエル・カスパー氏の各氏に師事。

藝大フィルハーモニア管弦楽団首席チェロ奏者、千葉交響楽団契約首席チェロ奏者。


 藝大フィルハーモニア管弦楽団

藝大フィルハーモニア管弦楽団は東京藝術大学に所属するオーケストラであり、藝大フィル定期演奏会のほか、

学生との協奏曲等の共演や作曲科学生の作品演奏のモーニング・コンサート、声楽科学生との合唱定期やオペラ公演、

指揮科学生との演奏会・試験など、学生の演奏経験の拡充に資している。近年では外部での公演も多く、メサイア、第九公演のほか、

2017年6月には南米チリにて4公演を行い、聴衆を魅了した。

前身である東京音楽学校管弦楽団は我が国初の本格的なオーケストラで、ベートーヴェン、チャイコフスキー、

ブルックナーなど多くの本邦初演を果たし、日本の音楽界の礎石としての活動を果たしてきた。(公社)日本オーケストラ連盟準会員。





 

0 件のコメント:

コメントを投稿