日本人演奏家のコンサートに行くようになって、少々経つ。
このまえ、藤田真央くんがチャイコフスキー・コンクールで2位入賞になったとき、そういえば、コンクールの覇者になったピアニストがいたんじゃないかしらということで、調べてみる。
すると、2002年に上原彩子さんが優勝していることを知る。
上原彩子さん、全然知らない。聴いたこともない。真央君でも2位だぜ、一遍ぐらいは、上原さんの演奏会にいってもいいなぁ、ということで、いろいろ探すが、なかなか適当なのが見つからない。
やっとベートーベンのピアノ協奏曲第4番を東響とやるのを見つけたので、切符をゲット。
上原彩子さん、なんでも、とってもダイナミックな演奏が評判で、チャイコフスキー・コンクール1位もそのせいらしいので、4番は方向違いかなぁと思ったんですが、何しろ4番はベートーベンのピアノ・コンチェルトでは断トツに好きな曲なので、試してみようということになったのでした。
で、ミューザ川崎に駆けつける。
一曲目
「ルスランとリュドミラ」序曲
なんだかすごい勢いで演奏が始まる。隈取りがハッキリ・クッキリ、早いところは遠慮無く猛スピードで、これでもかって、まくっている。
「ルスランとリュドミラ」にしたって、ちと、乱暴すぎでしょう。
ノットが振るときの、純度の高い東響の美音が消し飛んでいました。若々しくはあるけれど。
ありゃりゃ、指揮者はどういう人かしらと、演奏後、思わずプログラムを確認。なんでもイギリスの出身、ブザンソンの優勝者だとか、棒振りだけは上手なんかしら。ベートーベンが心配だなぁ。
2曲目 お目当てのベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番
上原さん、シックな深い紫(紺?)のドレスで登場。
で、キリッと音の立ったブリリアントな音で弾き始める。
基本的に情感とかポエジー重視というより、リズムのキレが目立つ弾きぶりです。
わたしの思い込みでは、4番は、5曲のベートーベンのピアノ協奏曲の中でかなり異色。 本当に詩的と言える、特別な情感のある曲という認識なんだが、そういう路線とはかなり違う。
3番の後が4番、次に続くのが5番という、ベートーベンの基本路線に乗ったいつもの気合満点のベートーベンという感じ。
2楽章は流石に情感豊かに弾いていて、中間楽章らしく、きちんと対比がついていたけれど、詩的な世界に浸り込むというところは、ちょっと少なめという気がしました。
(ピリスの4番がなつかしい)
それに、もしかしたらちょっと、不調だったのかもしれません。
どうも懸念があたってしまったという結果になりました。
バックのベン・グラスバーグも同じ傾向と言って良いのかしら。上原さんの助けにはなっていなかったなぁ。
アンコールはチャイコの四季の1月「炉端で」(今は1月ですもん)
この前ヴィルサラーゼで聞いたばかりの曲だが、全然忘れておりました。でも、上原さん、やはらかく、さらりと弾いていて、これはなかなか感じの良い弾きぶりでした。
上原彩子さんって、いったいどんな曲ならぴったりくるのかしら、もうすこししっくりきそうな演奏を聴かないと、真価はわからん、というところです。
後半
チャイコフスキー 交響曲第5番
正直どうなることかと思ったが、グラスバーグさん、なかなか快調に振っている。
クッキリとアクセントを効かせて、ちょっと劇画調。でも、ケレン味たっぷりのチャイコにはぴったりと合っている感じ。
あざとさ満点のチャイコを小気味よくドライブ。のりのりな感じで、スピーディーに進行。
ほとんど粘らないので、過剰な臭みもそれほどなく、気楽に聞いていられました。
バッティストーニのチャイコみたいな、心からあふれ出す歌心や推進力、ああいう生命力は希薄なので、チャイコ・アレルギーのわたしでも、あまり負担にならないくて、楽ちんということみたい。
最後には大いに盛り上がって、かっこよく曲を〆ておりました。まあ、よろしいんじゃないでしょうか。
でも、ロシア的情念とか、ジメジメドロドロの大立ち回り的しつこさはほとんどないので、チャイコラブの方々がどう思うかはわからないなぁ、気にいるのかしら、とは思いました。わたしゃ、助かったけれどもね。
2020/1/19(日)
14:00 開演 ( 13:30 開場 )
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール (神奈川県)
東京交響楽団 名曲全集 第153回
[指揮]ベン・グラスバーグ
[独奏]上原彩子(p)
[演奏]東京交響楽団
グリンカ(歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲)
ベートーヴェン(ピアノ協奏曲第4番ト長調)
チャイコフスキー(交響曲第5番ホ短調)
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