2014-10-04

パルシファル @NNTT

新国立のパルシファルに行く。NNTT初演目だそうで、飯守泰次郎さんが総監督就任後の初の出し物である。
飯守泰次郎といえば、はるか昔のわが青春時代に、ドイツの歌劇場で修業している、若手の本格派がいて、まあ、注目の新人という感じだったのを、懐かしく思い出す。
日本人でワグナー振れそうなのがやっとあらわれた、という期待が充満していたような気がするが、帰国後、あまり、メジャーな活躍をしているという印象をもっていなかったので、NNTTの新オペラ総監督になるという話には、かなり驚いたものだ。まあ、わたしの、情報弱者ぶりが露呈したというわけである。

で、初登場がいきなりパルジファル。これは、気合が入っているなぁ、ということで、期待と不安がいりまじって、ドキドキもんでございます。

ワグナーのパルジファルの実演は、これも大昔、1989年ウィーン国立歌劇場来日公演をNHKホールで聞いた憶えがあるが、ワグナー信者ではないので、なかなか、面妖なものを見物させられた気がしたものである。

で、今回の公演、クプファーの新演出とかで、なかなかの力の入れようである。

【指 揮】飯守 泰次郎
【演 出】ハリー・クプファー
【演出補】デレク・ギンペル
【装 置】ハンス・シャヴェルノッホ
【衣 裳】ヤン・タックス
【照 明】ユルゲン・ホフマン
【舞台監督】大仁田 雅彦
【合唱指揮】三澤 洋史
キャスト
【アムフォルタス】エギルス・シリンス
【ティトゥレル】長谷川 顯
【グルネマンツ】ジョン・トムリンソン
【パルジファル】クリスティアン・フランツ
【クンドリー】エヴェリン・ヘルリツィウス
【第1・第2の聖杯騎士】村上 公太、北川 辰彦
【4人の小姓】九嶋 香奈枝、國光 ともこ、鈴木 准、小原啓楼
【花の乙女たち】三宅 理恵、鵜木 絵里、小野 美咲、針生 美智子、小林 沙羅、増田 弥生
【アルトソロ】池田 香織
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

で、幕があがると、稲妻形の道呈の奥に、仏僧らしきものが3人(黙役)すわっている。ま、パルシファル、お話には、ほとんど、興味はそそられないわけでありますが、音楽は、なかなかに聴かせるもんなので、良い出だしみたいです。

この演出、予想外に面白いんじゃないでしょうか。クプファー、あまり、いいと思った記憶がないんですが、今回は、作品の本質にズバリ切り込んでくる感じです。感心。

特に、第2幕は音楽もすさまじく強力なので、お腹いっぱい、ワグナーを詰め込まれた気になりました。

ただ、作品の聖なるものと俗なるものの相克と解放、肉欲とシニシズムからの解脱という意味で、真に納得のいく救済の音楽になっているのかは、やはり、疑問でした。

クンドリーの深い絶望に、パルジファルがきちんとこたえてくれたとは、どうしても聴こえませんでしたもの。

ま、それだけ、第2幕がすごかったということでしょう。

ジョン・トムリンソンのグルネマンツ、すんばらしい。
ロバート・ボークのクリングゾルも、じょうじょう。
エヴェリン・ヘルリツィウスのクンドリーも、第2幕で、爆発してくれました。
クリスティアン・フランツのパルジファルが、印象薄なのは、わたくしメの作品理解不足ゆえかもしれません。
飯守 泰次郎さんも、充分に実力発揮であったと思います。

今回のパルシファル、NNTTの久しぶりの傑作、大ヒットじゃないでしょうか。レパートリー化すべきだと思いました。

で、わたしは、また来たい? パルシファルだからなぁ。できれば、リングを、ウォーナーのトーキョー・リングじゃない、せめて、トンネル・リング(ベルリン・ドイツ・オペラ、ヘスス・ロペス・コボス指揮 、ゲッツ・フリードリヒ演出、1987年東京文化会館)ぐらいの出来のやつを、見てみたいんですが。お願い。

ワグナー生誕200年祭にリングをやらなかったなんて、どういう了見よ、NNTT。

終演予定時間19時40分を10分超過して、19時50分までかかりました。おかげで、こんなに凄い出し物だったのに、わたしたち夫婦は、幕が下りるのをまって、拍手もせず、劇場から走って逃げたのでした。もちろん、夕飯にありつくため、必死だったんです。、不埒もんだわな、サイテー。


1989年、ウィーン国立歌劇場来日公演のパルシファル(NHKホール)、キャストはこんなんだったらしい。いかにもエヴァーディンクらしい、微温的な演出で、ぼんやりとしか、憶えておらんが。

アンフォルタス/フランツ・グルントヘーバー
ティトゥレル/ゴラン・シミック
グルネマンツ/ハンス・チャマー
パルジファル/ルネ・コロ
クリングゾル/ゴットフリート・ホルニック
クンドリ/エヴァ・ランドヴァ

アウグスト・エヴァーディンク演出
ハインリッヒ・ホルライザー指揮

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